チーム向けワークフローを設計する
Skills、サブエージェント、Hooks、MCPを必要最小限で組み合わせ、評価・承認・停止を含む導入提案を作ります。
課題:変更前チェックを再現可能にする
チームで繰り返している「プルリクエストを出す前の確認」を題材に、導入提案を作ります。ゴールは機能をできるだけ多く使うことではありません。手作業の問題を特定し、必要なものだけを選び、失敗したら安全に手動へ戻せる設計にします。
この演習では実プロジェクトの設定を変更したり、実サービスへ接続したりしません。架空のリポジトリとデータを使い、導入前の設計書を完成させます。
1. 現状と課題を記録する
まず、現在の手順を箇条書きにして、担当者が判断している箇所、繰り返し抜ける確認、時間のかかる調査を分けます。少なくとも通常の変更と、失敗・例外を含むケースを一つずつ想定します。
| 項目 | 記録すること |
|---|---|
| 作業の開始条件 | 誰が、どの時点で確認を始めるか |
| 入力 | 変更差分、テスト結果、プロジェクト規約など |
| 現在の手順 | 人が行う確認と判断 |
| 困っている点 | 時間、ばらつき、見落とし、やり直し |
| 基準値 | 完了時間、確認時間、失敗や見落としの実測値 |
実測できていない数字は推定値として分け、導入効果の根拠に混ぜないでください。
2. 各機能を採用するか判断する
次の表を埋めます。採用しない機能にも理由を書き、目的のない仕組みの追加を避けます。
| 機能 | 今回の候補 | 判断の例 |
|---|---|---|
| プロジェクト指示 | 共有すべき検証コマンドと既知の規約 | 常に必要な短い事実だけを記載する |
| Skill | 変更前チェックの手順と報告形式 | 手順が安定してから再利用可能な形にする |
| サブエージェント | 差分から関連テストを探す調査 | 独立して返せる読み取り専用の作業に限る |
| Hook | 決定的なローカル検証 | 起動条件、入力、副作用、失敗時動作が明確な場合のみ |
| MCP | 課題管理の情報を参照する必要性 | 必要な情報がローカルにないと確認できるまでは接続しない |
複数の機能を選ぶ場合は、役割の重複と、機能間で受け渡す情報を説明します。たとえば、手順の説明だけならSkillで足り、イベントに応じた決定的なコマンド実行まで必要な場合にのみHookを別途検討します。
3. データと権限の境界を図にする
文章または図で、次の流れを記録します。
開始条件 → 入力データ → 読み取り・処理 → 人の確認 → 出力先
各段階について、実行主体、読み書きできる対象、外部送信の有無を記載します。課題本文やコードコメントなど外部から入る文字列は、指示ではなく未信頼データとして扱います。最初のPoCではテスト用データと読み取り専用の範囲を優先し、書き込みや公開操作は自動化の対象にしません。
| 確認項目 | 設計書に残す内容 |
|---|---|
| データ | 入力、保存先、外部へ送る可能性のある情報 |
| 権限 | 必要な読み取り範囲と、不要な書き込み権限 |
| 承認 | 人が内容・対象・結果を確認する地点 |
| 失敗時 | タイムアウト、異常終了、誤検知時の動作 |
| 運用 | 担当者、ログの扱い、無効化と手動復帰の方法 |
秘密情報を演習用ファイル、プロンプト、ログに貼り付けないでください。認証情報が必要な構成は、チームの承認済みの保管方法と運用規則を別途確認します。
4. PoCの評価条件を作る
導入前に、通常ケースと失敗ケースの両方で確認する項目を定めます。最低限、出力が正しいこと、禁止した書き込みが起きないこと、異常時に処理を止めて人へ報告することを評価します。速度や利用量は、レビューにかかった時間も含めて既存の手順と比較します。
PoCの合格・中止条件は「便利そう」といった印象ではなく、観察できる結果で書きます。安全や品質の条件を満たさない場合は、速度が向上していても合格にしません。
提出する設計書
次の見出しを使い、1〜2ページ程度の提案を作ります。
- 目的と対象外: 解決する反復作業と、自動化しない操作
- 現状の基準値: 作業時間、確認時間、品質、例外
- 選んだ仕組み: 各機能の目的と、採用しない機能の理由
- 処理とデータの流れ: 開始条件から出力までの流れと権限
- 承認と安全策: 人の確認点、秘密情報、外部接続の扱い
- PoCの評価: 通常・失敗ケース、合格条件、中止条件
- 運用と復旧: 担当者、ログ、無効化、手動手順への戻し方
完了条件
- 課題と基準値を、推定と実測を区別して記録した
- 各機能を使う理由、または使わない理由を説明できる
- データ、権限、承認点、外部接続の有無を明記した
- 通常ケースと失敗ケースで確認するPoC条件がある
- 担当者、停止条件、手動復帰の手順を定めた
- 実環境へ導入する前に、関係者レビューと公式ドキュメントの再確認が必要な点を列挙した
参考資料
公式ドキュメントの参照先を2026年10月18日に確認しました。実際の設定、権限、利用可能な機能は導入時点の公式資料とチームの運用ポリシーで確認してください。